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渋谷109編 ~その1~

その日のミッションは『素行調査』だった。探偵稼業の基本中の基本。遠距離恋愛中の彼氏が彼女の素行を怪しんで依頼してきた。最近、休みの夜になると、彼女と連絡が取れ無いのだそうだ。怪しい。

あ~ん、ビビビビッ! 胸に入れてあった携帯が、チクビ付近でブルブルと震えた。慌てて取った携帯のディスプレイには"本田隆一"の名前が。

秋山「は、はい。秋山です…」


本田「対象者が動いたよ! 白のチュ-ブトップにデニムのミニスカート。ヴィトンのバックを持った女だ! …と思うんだけど。とにかく、早くこっちに来て!」

アドレナリン、大量分泌! 見張っていたマンションの裏口から、正面玄関にフルダッシュ! と、走りながらオレは考えた。「だと思う」って何? この日は秋山・本田コンビでのファースト・ミッション。一応、先輩がフォローしてくれているけど、メインはオレたちふたり。本田もキンチョーしてるんだろうなあ。いや、待て待て。本田の位置からは、対象者女性の部屋の出入り口が見えていたはず。だったら「だと思う」じゃなくて、「間違いない」でしょ? やっぱ。おっと、そんなことより、対象者を探さなきゃ…。居た! 駅方向に歩く対象者女性を発見。その女性を尾行する本田を追い抜き、一応、顔確認。そして、スローダウン。本田の横に並んだ。

秋山「間違いなくあの女ですか?」


本田「だって、部屋から出てきたんだから間違いない。…と思う」

本田の気持ちがわかりました。だって、写真の女と雰囲気と全然違うんだもん! 依頼人も、対象者のことを地味なOLみたいな感じだと言ってたし、メガネもかけてたし。それが、メイクもばっちりだわ、眼鏡もかけてないわ。おまけに、紫のカラーコンタクトまで着けてる。前髪も起ててプチリーゼント風。両耳には、でかいリングピアス…、だけじゃなく、バッチリ露出したお腹にはへそピアスまで装着されてる! 腕にもリングをジャラジャラと着け、左肩には刺青が…。


「東京の女ば怖かけん。気い付けんとイカンばい!」。九州に居る母ちゃんの言葉が脳裏をよぎりました。

秋山「あれって、刺青ですよね?」


本田「え、タトゥーのこと?」

お母ちゃん、東京ってば、刺青も横文字で言うとばい! 


秋山「そ、そうです。タ、タトゥー」


本田「うん。あのデザインはイケてないよなぁ」

デザインの問題かよっ!

OLが刺青入れてることにビックリしていたオレはやっぱり田舎者? 東京じゃ当たり前なのか? 普通なのか? ヤバイ! 田舎者だと馬鹿にされる!


秋山「でっ、ですよね~。ダサいっすよね…」


本田「先輩からもこの女を追えって連絡が入ったからさ。つまんない事言ってないで、行くよ」

本田に促され、対象者を追い地下鉄に乗り込む。対象者が下車した駅は渋谷だった。渋谷駅に着き地上に上がると、そこはハチ公前広場。胸がドキドキしてくる。何を隠そう秋山は、この時初めて渋谷の地を踏んだのだった。


対象者は、ハチ公前に立ち止まり、タバコに火をつける。男と待ち合わせか? 対象者の動きを気にしつつ、ハチ公前とスクランブル交差点に溢れる人だかりに目をやった。すごい人数。今日はお祭りかイベントでもあるのかなあ…。すると、本田が信じられないセリフを吐いた。

本田 「今日は人が少ないなあ」

嘘だろっ!


こんなにたくさん人がいるのに、これで少ないのか? 渋谷は、これが普通なのか? ヤバイ! 田舎者だと馬鹿にされる!

秋山 「でっ、ですよねぇ~。今日は人が少ないですね…」

おっと、対象者が動きはじめた。トコトコと向かった先には大きく『109』と書かれたビルがあった。これは、さすがにオレでも知っている。ギャルの殿堂でしょ?

秋山「このまま入りそうですね。ゼロ・キュウに」


本田「え? マル・キュウだろ?」

やべぇ~!


次回に続く。

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