いつものごとく騒がしい新宿アルタ前。
落ち着きのない街です。道行く人々を煽っているのは、やかましい音楽と耳障りな奇声。
"女装"をしている男が、よく言えば前衛的、わかりやすく言えば意味不明なライブを演奏していました。そして、ライブを見学している群衆の中に、お目当ての女性がいたのです…。
~1日前の事務所にて~
「あ、来た来た。秋山、ちょっといいかなあ?」
やさしい口調で声を掛けてくるときの三沢所長は、何かを企んでいる。
ニヤニヤしている本田の顔も怪しさ満点でした。
秋山「新しい案件ですか?」
三沢「急な依頼で時間がない。明日、さっそく動いてもらいたいんだ!
題して【愛の行動調査~上京娘を追え!~】って感じだな」
本田「うまい! 見事に調査内容を言い得たネーミングですなあ」
いつからモミ手なんてするようになったの本田さん? あんたは中間管理職か?
三沢「細かいことは本田と打ち合わせてね。じゃあ後は頼むよ」
そういう言い方、イケてないダメトップみたいですよ、所長…。
【ミッション内容】
今回の依頼人は九州地方の男性。上京娘と言うのは依頼人の彼女。つまり、ターゲット。今年で地元の大学を卒業するターゲットは、記念として東京へ遊びに行くことを決めたらしい。
それもひとり旅。そりゃあ彼氏としては心配になる。なんか、イヤな予感がしたんでしょうね。
その予感が的中(?)。彼女の部屋に遊びに行った依頼人は、彼女が予約したホテルの確認用紙を発見したのですが、そこにマークされていた希望の部屋タイプは"ダブル"だったとか。ひとり旅なのに、"シングル"じゃなくて"ダブル"。
マドンナでもないくせに、大きい部屋を予約していた。彼女は単なる一般人。一般人が"ダブル"を予約するのは、ベッドがふたつ必要だからです。つまり、ひとりじゃないということ。論理的に考えれば、すこぶる怪しい。そして、依頼ということになったわけです。
気になって突っ込んだ依頼人に対して彼女は、
「もしかしたら東京で友だちに会うかもしれんし…」
などと曖昧な返事をしたらしい。<それ、男ね? 女ね?>
秋山 「了解。要するに素行調査って事でしょ?」
本田 「まぁ~・・・・ザックリ言うとね。」<ハッキリ言わんね!>
こっちは、彼女の行動より、奥歯に物が挟まったような本田のしゃべりに疑問を感じたのでした。
そこで、調査資料に目を通すと【聞き出し工作にて愛情度チェックを実施する(担当:秋山)】という記述が。
秋山 「ほ、本田さん。この愛情度チェックって、もしかして?」
本田 「そう。その"もしかして"だよ。頑張ってくれ!」<はよ言わんかい!>
ただの素行調査ではありませんでした。調査は、あくまで布石。メインは工作です。
タイミングを見計らってターゲットに接触。仲良くなることがファースト・ステップ。その後、友達が男か女か聞き出し、男であれば、素行調査をメインに切り替えて身元特定&証拠入手。
女であれば"余計な虫(ナンパ含む)"が付かないようにターゲットを保護するといった感じ。要は、こっちが先にターゲットをナンパしてしまえということです。
オレが九州出身だからという安易な発想?
いや、六本木潜入の実績を買われて抜擢されたんだと信じたい…。
~ふたたびアルタ前の現場~
素行調査の末、アルタ前で立ち止まったターゲットを捕捉。接触のチャンス到来です。
本田「行け、秋山! しっかり捉えてこいよ!」
あんたは鵜飼いか! ぶつくさ言いながらも、群集の中へ入っていく。路上ライブに集中しているターゲットに近づき、さっと横に立ち止る。アプローチは完璧です。
しかし、ここからが問題。"福岡のウォンビン"と言われた九州軟児のナンパ術(?)は、果たして通用するのか!?
つづく