今月お届けする話の舞台は、喧騒の街・新宿。オレ、本田隆一が、よ~くお世話になっていた歌舞伎町。ハードボイルド探偵小説『新宿鮫』でも有名な街。『酉の市』が開催される花園神社。XYZと書けば人知れず助けが来る事で有名な新宿駅の掲示板。文化芸能人たちに愛されてやまないゴールデン街。マニアックなエリア・2丁目界隈などなど…。
ちょっと宣伝までに。当店の母体でもある親会社 FAX探偵ドットコムも、ここ新宿にあるのだ。面談無料なので気軽に相談していただきたい。
俺はこの新宿という街が東京都内では、一番好きだ。10代の頃から遊んでいるので、色々な思い出が詰まっている。
歌舞伎町の中心地、コマ劇場前の広場で当時、付き合っていた彼女にふられた話や、探偵になってから、はじめて潜入調査をしたのも、ここ歌舞伎町だった。
思い出話に花を咲かせたいところだが、話が長くなるので今日はやめておこう。
そんな自分の庭ともいえる大好きなこの街を、俺の大好きな人間の一人でもある男を連れて飲みに行ってきた。上京したての同僚・秋山武士だ。
九州出身の田舎者・秋山の事だから、しゃれた店に連れて行っては心苦しいかと思い、チープなお店の集まるところをセレクトした。チープと言えば西口ガード近くの『しょんべん横町』。今では立派に『思い出横町』なんていう名前のついているエリアだ。しかし、フツーのところじゃおもしろくない。折角だから、フツーじゃない店に案内してみた。わかる人にはわかるゲテモノ料理屋だ。
驚かせてやりたかったのだ。ビビッて箸も出せない秋山を見て笑ってやろうと思っていた。何せ、この店で出てくる料理ときたら、ヤモリの姿揚げだの、カエルのから揚げだの、強烈なゲテモノばかり。ククク…。目を丸くする秋山の顔が目に浮かぶ。
狭いカウンター席に腰を下ろした。マスターに適当なゲテモノを注文した。出された物を見て秋山が驚く。はずだったのだが…。
「ああ、これヤモリですね。けっこう好物なんですよ!」
アレ? 予想と違う。その後も、出てくるゲテモノ料理の数々に秋山は、次から次へと箸を伸ばす。
「うまいッスねえ。本田さんは食わないんッスか?」
食えない…。秋山を驚かすためだけに行ったのだ。困った。油汗が出てきた。一方、秋山は水を得た魚のようだった。
「コレ、うまいッスよ! ホラ、あげますって。カエルの足!」
ムムム。自然児・秋山にやられっぱなしの夜になってしまった。覚えてろよ、秋山! 今度こそ、都会の恐ろしさを教えてやる!