本田「ふう。今日も疲れたな。」
秋山「そうですね。今日も忙しかったすね。こう忙しいとお腹、すきません? どっか食いに行きましょうよ。どこにします?」
またかよ…。最近、アンサーで閉めの作業中に話をしていると、必ず、こういう流れになる。秋山ときたら、二言目には飯だもんなあ。普段は、24時間、開いてるラーメン屋『一蘭』に行くことが多い。しかし、九州出身の秋山は、ことトンコツにはウルサイ。せっかく一緒に食いに行っても、
「まあまあッスけど、やっぱ本場の味には届かないッスねえ…」
とくる。そんな"まあまあ節"を毎回、聞かされるんじゃたまんないよ。でも、あまりチョイスがない。仕方ないよ、秋山。『一蘭』で済ませようよ。今日も。
本田「やっぱ、い(ちらん)…」
秋山「やっぱ、そうですよね? 六本木でメシ食うのも飽きましたよね!」
ウッ、退路を絶たれた。悩む。どこかに連れてけ的な目をしていやがる。そろそろ汚名返上といきたいところだが、どこにすべきか…
あ、いいとこがあった! ゼッタイにハズさないナイスなとこが!
本田「フフフ。じゃあ、今日は少し足を伸ばしてみようか」
秋山「あ、どっかあるんッスか? どこでも行きますよ!」
本田「あるよ。こんな早い時間から異常に活気のあるところがね」
食い気に駆られた秋山の激走。バイクの後ろで必死にナビしながら、命からがら辿り着いた先は、築地であった。江戸の昔から東京の食生活を支えてきた台所。"本場築地"と言われ続ける"東の水揚げ窓口"である。
そんな築地には、早朝から開いてる店がゴマンとある。場外、場内を含めて定食屋から洋食屋などが所狭しと立ち並んでいる。寿司にうなぎ、魚介類系なら、何でも食える。しかも、超新鮮!
秋山「朝からこんなに人がいるよ! 六本木以外では見たことないッスよ!」
本田「フフフ、市場だからね。当然だよ。さあさあ、何でもいいよ。何食いたい?」
やけに自慢げ。とうとう名誉を挽回したという自負が、オレに余裕を与えた。
秋山「じゃあ、あそこにしましょうよ!」
築地まで来て回転寿司かよ! しかし、秋山は譲らない。数多ある選択肢の中で、ナゼか回転寿司。どうしても行きたいと言い張る。
秋山「オレ、まだ回転寿司って食ったことないんッスもん…」
おいおい、涙目になることないじゃん。わかったよ、回転にしよう、回転に…。
秋山「おお、廻ってくる廻ってくる! これ、勝手に取っていいんッスね?」
そうだよ、秋山。しかも、ツウは、自分の好みを注文するのさ。
本田「すいません。イクラとウニください!」
板さんも腕がいい。握るの早い早い。オレの注文もスグ様流れてきたよ。
秋山「お、いいッスねえイクラ! いただき! ウニもいただき!」
アレ? おい、それはオレが注文した寿司なんだけど…。まあ、いいや。ちょっとビックリしたけど、気を取り直して…。
本田「あ、あとビントロにエンガワ。それとアジも」
本田「え、ええとねえ。こっちにホタテとアカガイ。それと、またイクラにウニ!」
本田「あ、あのね。こっちにもう一枚、ビントロとエンガワ。あとイクラとウニ!」
秋山「はあ、もう食えないよ。美味かった! ささ、帰りましょうか。アレ、どうしたんッスか? 本田さん…」
本田「ま、まだ、何も食ってないんですけど…」
人が注文したネタを勝手に取って食ってんじゃねー!!!(激怒) 板さん、こっちって言ってるんだから、流さないで直接、手渡ししてよ…。
教訓:『回転寿司屋では秋山を右に座らすべからず