本田「秋山。起きろ。着いたぞ。」
秋山「むにゃ、むにゃ。後、5分だけ寝かせて下さい…」
本田「5分も寝てたら通り過ぎるだろ! 起きろよ。置いていくぞ!」
その日の営業を終え、旧店舗の整理をして電車に飛び乗った。もちろん、徹夜。オレたちが降り立ったのは、"東の玄関口"(古い?)、上野であった。
上野から御徒町へと繋がっている商店街"アメヤ横丁"が目的のエリアだ。何をしに来たかというと、ズバリ、食材探しである。もうすぐ、新アンサーが誕生する。そこで、新メニューのアイデアを胸に、原材料を探し回ってみようと思ったのだ。原材料とくれば、市場。都心で市場といえば上野というワケ。
本田「しかし、相変わらずせわしない街だなあ…」
どっから声出してんの? と聞きたくなるようなダミ声で怒鳴る客引き。安い品を求めて右往左往する買い物客。魚屋の隣で革ジャンを売るというメチャクチャなレイアウトの商店街は、街そのものがパニック陳列といった感じだ。
「はぁ~い、安いよ、安いよ!!! どうコレ? 新鮮どころ1パックつけちゃうよ!」
客引きの威勢は、何ともすごい。青年相手にイクラを売りつけようってんだから、見境いもない。
本田「いいか、上野での買い物は相手の口車に乗ったら負けだぞ!」
秋山「ウスッ! 大丈夫ッス!」
一口に"アメ横"と言っても、エリアは広大だ。そこで、オレと秋山は手分けして安い店を探すことにした。
「おにーちゃん。安いよ。寄ってて。今ならタイムサービスでイカもつけちゃうよ!」
しつこい客引きを無視してオレたちは突き進んだ。そして、1時間後に待ち合わせすることにして、オレはひとり、高架下の商店へ向かった。
1時間後。待ち合わせ場所にやって来た秋山は、大きなビニール袋を抱えていた。
本田「おいおい、まだ買うのは早いって。まず店を決めてから…、ってソレ、何?」
袋の下からは、血のようなものがポタポタと垂れていた。ま、まさか、あ、秋山君?
秋山「あ、マグロ買ったらイカもついてきたんッスよ。それにイクラ! 1個の値段で2個くれたんッスよ!ついでだからタコも買っちゃいました!」
本田「この"タコッ"!!! 何、口車に乗って買わされてんだよ! 貸してみろ!」
手にしたイクラの入れ物は、下から持つとえらい深くまで指が入るチョー上げ底。これじゃ2個で1個分だよ、元々…。
本田「ホラ、騙されてんだよ、オマエ。だいたい、こんなに魚買ってどうすんの? ウチは"探偵寿司BAR"じゃないんだぞ?」
怒りに震えた秋山が、返品に向かったが、そんなもの、取り合ってくれようはずがない。
ちょっと違うかもしれないが、出会い系とかで騙されてしまった相談者様たちの気持ちが少しはわかったかね、秋山君?