今回は、ちーとばかり、番外編ということで、カクテル素材の脇役にスポットを当ててみたい。
一滴入れるだけで風味をガラリと変えてしまう魔法のリキュール、アンゴスチュラ・ビターズである。
なんだか舌を噛んでしまいそうな名前のリキュール。
りんどう属のジェンシアンをメインとして、シナモン、キナ皮、アンジェリカ、コリアンダー、ナツメグ、アーモンド、カルダモンなどが配合されている。
と、まあ聞いただけだと、まるで薬。
というか、元々は、胃腸薬として開発されたらしい。
アンゴスチュラ・ビターズは、スペイン占領下のベネズエラ生まれ。
その歴史は意外に180年前にも遡るのだ!
1820年代当時は、ベネズエラ独立戦争の真っ只中。
アンゴスチュラ町にあった英国陸軍病院で、食欲不振や医の疾患に悩む兵士たちを診ていた軍医のJ・シーガート博士が、特効薬として1824年に開発したのだった。
でもって、町の名前を取ってアンゴスチュラ・ビターズとしたワケなんだなぁ。
その博士が死んだのち、子孫たちが秘伝のレシピを守ることを決意。
政情不安なベネズエラを捨てて、トリニダードトバゴに移住。
そこの首都に工場を作って、現在でも生産中っつーワケなんだなぁ。
しかし、いつしかこのアンゴスチュラ・ビターズがカクテルの風味付けに使われるようになっていった。
代表的なところでマティーニなんかに、ピョッと一滴、入れたりしている。一滴で十分。
それだけ、強烈な香りのリキュールなのだ。
しかし、その風味は格別で、カクテルの味にこの上ない深みを与えてくれる。
何も、レシピにこだわることはない。
たとえば、ジン・トニックなんかに入れても、かなり美味しくなるのだから…。
アンゴスチュラ・ビターズがどんな風味かと問われると、表現に悩む。
まあ『探偵物語』で言えば、ドラマに深みを与える服部刑事みたいな感じ。
そう、惜しくも他界してしまった名脇役・成田三樹夫のようなリキュールなのだ。
リキュール界の成田三樹夫、アンゴスチュラ・ビターズ。
“監督”たるバーテンダー・三沢は、この“俳優”をあらゆる“シーン”(カクテル)で使っているのだ。
同じものを注文しているのに、ほかの店と違うなあと思ったら、”成田三樹夫“が、
「工藤ちゃんよぉ~!」
って感じで、いい味を出していると思ってくだされ!