三沢、久しぶりのスタジオ生出演!
いよいよ緊張のリハーサルがはじまった。
秒刻みで進む現場。
果たして、台本どおりにことは運ぶのだろうか?
本番突入。アドリブが飛び交う現場で、三沢の胸に、ある想い が去来した…。
「それではリハーサルに入ります。三沢さん、よろしくお願い します!」
クゥ~、願いは届かず、帽子にマスクにサングラス姿のまま、セットの中に。
「よろしくお願いします…」
声もヘリウム・ボイスのままだった。用意された椅子に座り、辺りを見まわす。
スタジオはガラス張りで、外にいる一般人が見れるつくりになっていた。オレの怪しい姿も当然、丸見え。
強烈な恥かしさに胃が締めつけられ、思わずゲップを一発。
「あ、すみません…」。
「いいですよぉ~。緊張しないで大丈夫ですからねぇ~」。
ガキ扱いかよ!
そりゃあ、素人には違いないけどさ。これでも、いい大人なんですけど。ブツブツ。
「いやあ、すごい格好ですねえ(笑)。どうも、はじめまして。日本テレビの…」
藤井アナじゃん! オレの隣にいたのは、紛れもなく、藤井恒久アナウンサー、その人であった!
「おいくつなんです?」
「あ、年齢ですか? ××歳なんですよ。これでも」(笑)。
「あ、同じ年だぁ! じゃあ、××年生まれなんですね!」
「あ、いや、もうすぐ誕生日なんで、ボクの方が1年早いですね」
「なんだ、1つ上かぁ…」
そんなに年齢が重要なの? 藤井さん。ちょっと突っ込んでみようと思ったら、次なる質問が飛んできた。
「探偵さんでいらっしゃるんですよね? やっぱり、浮気調査とかが多いんですか?」
リハーサルがはじまる直前のプチ・インタヴューだ。さすがはアナウンサー。事前情報の収集は欠かさない。
「いや、最近は、もっとパーソナルな案件が多いですね。調査を超えてサポートをお願いされるケースがほとんどです」
聞き慣れないフレーズにキョトンとする藤井アナ。
「え、サポートですか? それって、何なんです?」
別れさせ、復縁、出会いをサポートする活動のことだと、端的に解説する。
「へえ~、そんなことまでやられてるんですねぇ!」
驚くのも無理はない。一般的には、まだまだ認知されていないもんなぁ。
「別れさせって、ドラマとかにもなってたアレですよね!スゴい。本当にあるんだぁ!」
藤井アナの隣の隣に座っていた杉上佐智枝アナウンサーが割り込んできた。ん? スゲー美人じゃん!
上品な雰囲気、知的な目元。お姉さんタイプがど真ん中のオレ。杉上アナは、超ストライク・ゾーンだった。
「え、ええ。本物ですよ。何かお困りでしたら、お店に来てくださいね」
「では、個人的に」(笑)。
社交事例でもウレシイ…。さて、リハーサルだが、実際には、ディレクターが説明を加えながら進んでいく。
よって、一連の流れというよりは、台本のパートごとに進行していく。合間には雑談も可。次のパートで紹介する探偵グッズを藤井アナが興味深そうに見ていた。
「コレなんですか? すごく小さいですけど」
藤井アナが食い付いたのは、アリバイ演出器だった。パチンコ・ホールや電車の音など6種類の効果音が出る装置で、電話口に当てて話せば、まるで、そこに居るかのような雰囲気を演出できる機械だ。
「うお~、スゴい、スゴい!パチンコ屋さんの音だ! 杉上は必要なんじゃない?」
「うわ~、便利そう。アナウンサー室に持っていったら、皆、欲しがりますよね!」
って、アナタたち、何に使おうとしているの? アナウンサーって、そんなにアリバイが必要な職業なのか?
「コレは無線…、じゃないですよね?」
次に藤井アナが興味を示したのは、盗聴発見器であった。
「コレがそうなんだあ。ホラ、杉上さあ、ちょっと前に『エナミー・オブ・アメリカ』っていう映画があったじゃん! あの世界だよね」
いや、あの映画で取り上げられてたのはアメリカ合衆国の特殊機関・NSA(国家安全保障局)でしょ? いくらオレたちがプロだって言っても勝てないって。さすがにスパイ衛星なんて持ってないし。
「探偵さんって、何でもできちゃうんだなあ…」
違うから、藤井アナ! アレ?
そういえば、『ホンジャマカ』の石塚英彦はどこ?
たしか、メイン・パーソナリティーのはずだが、"石塚"と書かれたネームプレートの席に座っていたのは、見たこともない人物だった。
ムムム、さすがは売れっコ。登場は、ギリギリのようだ。
と、思っていた矢先、石塚英彦がスタジオにやって来た。うわ、デカ!
カラダもそうだが、顔の大きさに驚いてしまった。ディレクターが、今日のゲストです、と石塚にオレを紹介した。
「あ、ホンジャマの石塚です」
満面の笑み。福の神のようなめでたい顔に、幸せを感じるオレ。
「はい。それでは、最初からいってみましょう!」
ディレクターの指示で、通しのリハーサルがはじまった。本番は生放送だけに、チェックも入念だ。石塚が探偵小道具の変装用メガネを取って、『これは何ですか?』と聞く場面がきた。
オレは、
「一般的な会社員を演出するメガネです」
と、台本どおりにことを進めた。石塚がメガネをかけてカンタンなリアクションを取る。
一連の流れは無事終了。
しばしの休憩を挟み、いよいよ放送時間が迫ってきた。
「本番5秒前! 4、3…」
スタジオ全体、大きな拍手とともに番組がスタート。最初のコーナーがアッという間に終わり、CM中に、セットへ移動するオレ。おっと、帽子とサングラスを忘れてた。
「CM明けまーす! 5秒前、4、3…」
こうしてオレの醜態が全国ネットで放映された。
しかし、このときは、自分の出で立ちなど、まったく気になっていなかった。
慣れというものは、恐い。台本どおり、順調に本番は進んでいった。
オレのしゃべりも好調だ。そして、変装用メガネの場面が訪れた。
「これは何ですかぁ?」
石塚のセリフは台本そのまま。そこで、オレは、ちょっとセリフを変えてみた。
「それは、うだつの上がらないダメなサラリーマン風のメガネです」(笑)。
しかし、石塚は、動じることなく、メガネをかけて、
「ホント、すみません。ボクも一所懸命やってるんですけど、西口と東口を間違えちゃて、ホント、すみませーん!」
などと、うだつの上がらないサラリーマンのダメっぷりを演じてみせた。一同爆笑。完全なアドリブである。オレは、マイウ~! と、心で叫んだ。
芸人・石塚英彦の底力に感服したのであった。

オレのコーナーは無事終了。
しかし、番組は続く。オレは、スタジオの端で、石塚の一挙手一投足に目をやっていた。
あこがれのスターを追いかけるストーカーのごとく…。
食べ歩きのコーナーでは、食べ物をパクッといった瞬間、目を閉じて美味そうに一言。
「ハァ~、デブ失神!」
大爆笑。オレは、すっかり、石塚ワールドにハマっていた。
そんなこんなで番組が終了。石塚は、早々と次の仕事に向かうため、スタジオを跡にしようとしていた。オレは、すかさず持ってきたデジカメを携え、歩み寄る。
「す、すみません。一緒に一枚いいですか?」
キョトンとする石塚。あ、そうか。オレの素顔を知らないんだっけ。
「さっきご一緒させていただいた探偵です」。
すると、石塚は笑顔で快諾。
「ハイ、チ~ズ!」
と、藤井アナが写真を撮ってくれた。
「今度、お店に寄らせてもらいますね。お疲れさまでした」。
去り際に、石塚はそう言い残した。ウソでもウレシイ…。
皆、やさしくていい人ばかりだったなぁ。
こうしてゲットしたストーカー・三沢、渾身のツーショット写真は、アンサーの店内に飾られることとなった…。